腎臓病の食事療法「たんぱく質制限」の目的とおすすめのたんぱく質摂取方法
この記事では「腎臓病食のたんぱく質制限」を長年製薬会社にて腎臓病に携わってきた研究者が解説します。
たんぱく質制限の目的とは何か?
1日の摂取量の目安、どんな人がした方が良いのかといった疑問点を紹介しています。
また、おすすめのタンパク質源や食べるコツも紹介していますので、ご一読ください。
慢性腎臓病における
たんぱく質制限の目的と
おすすめのたんぱく質摂取方法
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この記事で分かること
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たんぱく質制限の目的が分かる。
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闇雲なたんぱく質制限は逆効果になることがある
と分かる。 -
慢性腎臓病でのおすすめのたんぱく質源が分かる。
たんぱく質制限のポイント!
①たんぱく質制限は自己判断で始めない。
②塩分・尿毒症物質・リン・糖化物質に気を付ける。
③エネルギー不足にならないよう、代わりのエネルギー源を摂る。
④必要なたんぱく質は良質なものを上手に摂る。
この記事の監修者
純炭粉末サプリ開発者
樋口 正人(ひぐち まさと)
株式会社ダステック代表取締役 1985年千葉大学大学院修了
元中外製薬主席研究員。元金沢医科大学医学部非常勤講師
長期使用を前提とした安心・安全な食用炭「純炭粉末」の研究開発や自社製造を続ける傍ら、食用炭を通じた健康の情報発信、啓蒙活動に取り組む。
参考文献紹介
この記事は以下の文献を参考にしています。
①日本腎臓学会『慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版』
②日本腎臓学会『エビデンスに基づくckd診療ガイドライン2023』
また、コンテンツポリシーをもとに監修されています。
01
注意!たんぱく質制限を始める前に読んで欲しい注意事項
腎臓病の食事療法の一つに「たんぱく質制限や低たんぱく食」がありますが、これは非情に難しいものです。
その理由は「腎臓を守るメリット」よりも「栄養不足や筋力不足を引き起こすデメリット」の方が大きくなりやすいからです。
なので弊社としましては、安易にたんぱく質を減らしすぎることは推奨していません。
簡単なチェックシートを用意しましたのでご確認ください。
□痩せている(BMIが20以下である)
□筋力不足だと感じる
□腎機能低下を指摘されたばかりである
1つでも当てはまるようであれば、たんぱく質制限は必要ないと思います。
たんぱく質制限を始める際は必ず腎臓専門医に相談してください。
たんぱく質制限や低たんぱく食は医師・看護師・栄養士・調理師といったチーム医療と血液検査や尿検査といった体調把握と共に行うものです。
腎臓病で調べるとたんぱく質制限の情報に簡単にアクセスできますが、たんぱく質制限を始める際は必ず腎臓専門医に相談してください。
参考:高齢者 CKD のための食事療法の
現状と課題
たんぱく質制限といっても、摂取量を0にしろという意味ではありません。
あくまで制限=減らしましょう、意識しましょうという目標の値です。以下の表は日本腎臓学会が作成したガイドラインです。
たんぱく質制限は健常者の4/5程度。20%ほど摂取量を減らしましょうという目標です。
たんぱく質は健康に必要不可欠です。極端に摂取量0にするのは間違いなのでご注意ください。
腎機能(GFR) | たんぱく質の目標(g/kgBW/日) |
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GFR≧90 | 過剰な摂取をしない |
GFR60~89 | 過剰な摂取をしない |
GFR45~59 | 0.8~1.0 |
GFR30~44 | 0.6~0.8 |
GFR15~29 | 0.6~0.8 |
GFR<a15 | 0.6~0.8 |
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たんぱく質制限の目的
腎臓病の食事療法の一つ「たんぱく質制限や低たんぱく食」がなぜ推奨されるのか解説します。
参考:腎疾患と栄養
たんぱく質は身体に必要不可欠な栄養素です。しかしながら、たんぱく質を摂る過程や吸収し排泄する過程で腎臓に負担をかける物質が生じてしまいます。
たんぱく質制限や低たんぱく食という腎臓への負担を減らすことで、腎機能低下速度をゆっくりにすることが目的の食事療法が用いられます。
では、具体的にたんぱく質の何が腎臓に負担をかけるのでしょうか。
腎臓に負担をかける物質 | たんぱく質との関係 |
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尿毒症物質 | たんぱく質を消化吸収する際に腸で発生する |
塩分 | たんぱく質を美味しく食べるために使う |
無機リン | 加工食品のたんぱく質に食品添加物として使われる |
AGEs(終末糖化産物) | たんぱく質を美味しく調理する時に発生する |
この大きく4つが腎臓に負担をかける物質であり、たんぱく質制限・低たんぱく食をすることで制限できるものになります。
一つ一つ解説していきます。
03
腎臓に負担をかける物質とたんぱく質の関係
尿毒症物質制限のためのたんぱく質制限
たんぱく質をアミノ酸に分解・吸収する過程で老廃物(インドールなどの尿毒症物質)が腸で発生し、血液中に取り込まれます。
腎機能が低下すると、この老廃物は腎臓から排泄されなくなり腎機能の悪化や尿毒症を引き起こします。
この老廃物(尿毒症物質)対策には球形吸着炭(クレメジン)という医薬品が用いられます。
クレメジンは尿毒症物質が腸から体に取り込まれる段階をブロックすることで腎機能の低下を抑える薬です。
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尿毒症物質対策
腸内環境を整える。球形吸着炭(クレメジン)を飲む。
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補足
たんぱく質を摂ればできてしまうので、たんぱく質制限以外の対策が必要です。
塩分制限のためのたんぱく質制限
たんぱく質と言えば、肉・魚・卵・豆が代表的です。
そして、これらたんぱく質を美味しく食べるためには塩や醤油が必要不可欠なんです。
ご存じの通り多すぎる塩分摂取は高血圧につながり、血管の集合体である腎臓も高血圧による影響を大きく受けます。
また、お年を召されると、塩分に関する味覚が低下していきます。
たんぱく質を美味しく食べるために必要な塩分が増えてしまい、塩分摂取量が自然と意識しないうちに増えていくことになってしまいます。
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塩分対策
カリウムを含まない減塩商品を使う。出汁を活用する。プロテインにする。
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補足
減塩商品の中には「塩化ナトリウム」の代わりに「塩化カリウム」を使ったものが存在します。過剰なカリウムは腎機能が低下した方には危険なのでそういった商品は選ばないようにしましょう。
無機リン制限のためのたんぱく質制限
たんぱく質を簡単に摂取するには時に加工食品に頼ることになります。
コンビニのサラダチキンやお弁当、お惣菜。
ご飯と汁物はご自身で用意して、メインの肉や魚は出来合いのものといった方も多いと思います。
しかし、加工食品には保存性を高めるため、美味しくするために「無機リン」という食品添加物が多く使われます。
この過剰な無機リンは血管の石灰化につながったり、尿に排泄する過程で尿細管を傷つけたりすることで、腎臓に悪影響を及ぼします。
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「無機リン対策」
加工食品はなるべく避ける。リン吸着剤を飲む。
糖化物質対策のためのたんぱく質制限
たんぱく質を食べるために何をしますか?
多くのたんぱく質は生では食べられないため、焼く・揚げる・蒸す、電子レンジ調理といった調理方法で食べます。
この時、揚げ物といった高温調理の料理ばかりを食べていると糖化物質(AGEs)が発生し、この糖化物質は腎臓を傷つけることが分かっています。
揚げ物を電子レンジで毎食温めているといった食生活の人は注意が必要かもしれません。
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「糖化物質対策」
揚げ物をレンジで温めない。茹でた・蒸した料理を食べる。サプリメントを飲む。
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腎臓病の方や中高年におすすめのたんぱく質
日常の中で食事の美味しさ、楽しさというのは重要です。
そこで必要なたんぱく質の確保におすすめするのはプロテインです。
ただし、ドラッグストアやスーパーで売っているプロテインは若者向けなのでリンや糖質、人工甘味料が豊富であり、あまり中高年や腎機能が低下した人にはおすすめできません。
腎臓病や食事制限がある方向けの専用のプロテインをご紹介します。
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たんぱく質の含有量が多いこと
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塩分無しや少なくても食べられること
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リンが少ないこと
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高温調理されていないこと
【よくあるご質問】
Q&A
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エンジョイプロテインは牛乳で飲んでもいいですか?
できれば、水に溶かして飲んでください。
牛乳はリンが非常に豊富な飲み物です。前述のように、腎機能が低下してきたらリンは避けたい物質の一つです。
基本は水でお願いします。
無味無臭なので、お食事に混ぜて頂いてもお召し上がりいただけます。
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補足:エネルギー不足解消におすすめのエネルギー源
【エネルギー源としてならMCTオイルがおすすめです。】
MCTオイルは実は40年以上も前から腎臓に良い食べ物として腎臓病患者のエネルギー補給に使われている実績のある油です。
使い方は加熱せず、そのままサラダや飲み物に混ぜて使います。
【MCTオイル】よくあるご質問
Q&A
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MCTオイルは機能性表示で痩せると書いてありますが、飲んでも大丈夫ですか?
はい。問題ないと思います。痩せる機能性は肥満の方向けの実験結果に基づくものです。
また、MCTオイルは長年慢性腎臓病の方や透析中の方のエネルギー源として使われてきた実績があります。ご安心してお召し上がりください。
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MCTオイルはメーカーによる違いがありますか?
中鎖脂肪酸の質や鮮度が異なります。弊社では日清オイリオの日清オイリオのMCTオイルをおすすめしています。
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