あなたの腸は何歳？意外と知られていませんが、腸内環境が若いほど腎機能の負担が減ります。

2014年12月、東北大学が腎臓病治療に関する画期的な論文を発表しました。

『便秘を改善すると腎臓病の進行が抑えられる』という内容です。

そこで質問です。

あなたの腎臓を診てくれているお医者さまから、便の具合や腸の具合を質問されたことはありますか？

今回のブログでは、透析を遠ざけるための新しいアプローチ、腸内環境の整え方をお伝えします。

私たちは腸内細菌に操られている？

我々の腸内には、重さ1～2㎏、数にして100兆個にも及ぶ細菌が住みついています。

※ちなみにヒトの細胞数は37兆個程度ですので、人間の細胞数よりも多い共存者が体内にいるという事になります。

近年では、腸内細菌が宿主（人間）に及ぼす影響が多岐にわたるということが分かっています。

無性にチョコレートが食べたくなるのは、腸の中にチョコレートを欲する細菌が住んでいて、人間の脳に「チョコレートを食べようよ～」という指令を送っているからだと言われているのです。

他にも糖尿病の腸内細菌を健康なマウスに移植すると糖尿病になってしまうなど、嗜好や思考や体質に腸内細菌が多大なる影響を与えていることが次々と明らかになっています。

侮りがたし！腎臓病と腸内環境の関係

腎臓に負担をかける尿毒素の大半は腸内悪玉菌が作っています。

慢性腎臓病では、食物繊維不足や腸管機能の低下による便秘などで腸内環境が悪化しやすくなります。

その結果、腸内環境の悪化→尿毒素が沢山作られる→弱った腎臓が上手に尿毒素を排泄できない→血液中の尿毒素量が増加→更なる腸内環境の悪化という負のスパイラル（腸腎連関）に陥ってしまいます。

尿毒素の蓄積は腎臓だけでなく肝臓や全身の血管・心臓にも負担をかけるので、腎機能が低下している場合は、健康な人以上に腸内環境に思いを馳せる必要があると言う訳です。

あなたの腸は何歳？

チェック項目にいくつ当てはまるかで、あなたの腸がどれくらい老けているのかがわかります。

生活習慣についての質問　　　/8点

□運動不足（1日8000歩以下）　 □タバコを吸う □顔色が悪く老け顔　 □寝つきが悪い、寝不足 □肌荒れや口内炎ができやすい　 □ストレスを感じる □肥満、糖尿病である　 □不規則な生活を送っている

食事についての質問　　　/8点

□食事が不規則（朝ごはんを食べない、就寝前に食べる等） □早食い　 □毎日飲酒する　 □魚より肉が好き □脂っこいものが好き　 □野菜不足（1日350g以下） □加工食品やレトルトをよく食べる □発酵食品をあまり食べない

トイレについての質問　　　/8点

□便の時間が不規則　 □いきまないと出ない □おなかに違和感がありはっている □下痢や便秘を繰り返す　 □便やおならが臭い　 □出た便が便器の底に沈みがち □便が硬い、コロコロしている □便の色が黒またはこげ茶っぽい （注：純炭粉末を飲んでいると便の色は黒っぽくなるのが普通です）

合計点でわかる、あなたの腸年齢！

先程の3項目（8点ずつ）の計24点のうち、いくつ当てはまったでしょうか？

当てはまる数が多いほど点数が高く、腸が老化している事になります。

早速結果を確認してみましょう。

合計点	あなたの腸年齢
０～４点	腸年齢は実年齢と同じかそれより若い状態。
５～９点	実年齢＋10歳　腸がお疲れ気味です。
10～14点	実年齢＋20歳　腸は老化が進行しています。
15点以上	実年齢＋30歳　腸内環境が原因で病気の可能性大。

生活習慣や食事に関する質問でチェックが入った項目が腸内環境を乱している原因です。

これを機会に見直してみませんか？

腸は時間に敏感！

旅行に出かけたときなど、生活や食事のリズムが変わって便秘になった…という経験はありませんか？

生活リズムが少しでも変化すると腸は敏感に察知し、便通に影響をおよぼします。

なるべく規則正しい生活を心掛けて、排便のリズムを作りましょう。

オススメは、朝おきたらコップ一杯程度の水分をとり、胃腸を目覚めさせましょう。
重要：就寝中に口の中で増殖した歯周病菌を飲みこまないように、朝の水分補給前には必ず歯磨き（又は洗口液うがい）をしてください！

また、朝食は抜かずに摂った方が『胃・結腸反射』がおこり、その刺激で腸が動き出しますよ。

ストレスフリーを心掛けよう

便秘に関係ないように思えますが、ストレスや睡眠不足があると、自律神経が乱れて腸の動きが悪くなります。

『脳腸相関』という言葉がある通り、脳と腸には深いつながりがあり、双方のストレスが伝わってしまうのです。

ゆっくりお風呂につかったり、好きな音楽を聴く、散歩やストレッチなどでリラックスして、お気楽極楽な生活を心掛けてください。

運動不足も便秘の一因に

1日30分程度、ウオーキングなどの有酸素運動が便秘には効果的です。

有酸素運動をすると、血行がよくなり、体を動かすことで腸にも刺激がおよび、腸が動きやすくなります。

お散歩のときは、少し早歩きにしたり、お買い物の時は少し遠回りするなどして、運動量を少し増やしてみませんか。

便秘の時だけヨーグルトをたべれば解決？

ある実験によると、ヨーグルトを食べ続けている間は、ヨーグルトに含まれる乳酸菌やビフィズス菌が腸内に留まりますが、食べるのをやめると2週間でヨーグルトの菌は検出されなくなります。

腸内環境を改善する成分は、コツコツと摂り続けることが大切です。

腸内環境は人それぞれ違うので、自分の善玉菌と相性のいい食品（納豆、ヨーグルト、海藻など）を地道に探し、見つけたら、毎日摂り続けて下さい。

腸内環境を整えるには

良い腸内環境は、以下の３つの要件が複雑に絡んで成り立ちます。

1)善玉菌を育てる	自身のお腹に住む善玉菌と相性のよい食物繊維や発酵食品を積極的に摂る
2)悪玉菌を増やさない	添加物、人工甘味料、脂っこい食べ物やたんぱく質のドカ食いを控える
3)腸の動きを良くする	適度な運動、飲水、ストレスをためない、飲酒や喫煙を控えめに

どれか”１つだけ取り組めばすべて解決する”ものではないのが難しいところ。

テレビCMで見かける「〇〇ヨーグルトを食べているから対策はバッチリ！」…と安心していられる訳ではありません。

それぞれの要素に着目して、継続的に腸に優しく過ごしてくださいね。

目指せ！便秘知らずの腸内環境

腸内環境改善にはうんち日記をつけるのがとってもオススメ！

最近ではスマホアプリで『便秘改善、カレンダー』と調べると、色々なアプリが出てきます。

手帳やカレンダーに記録していってもOKです。

ウンチの観察ポイント

どんなうんちが何回？（固い、柔らかい、匂い、形状、色）

どんな食事？（野菜の量、肉や魚の量、食事時間、回数、不規則じゃなかったか）

どんな腸内環境改善策を講じたか（２週間は続けて経過観察する）

腸内環境で気になったこと（お腹のハリ、おならの回数やニオイ）

便秘薬の種類や回数

普段は観察せずに流してしまっているうんちですが、生活習慣や食事との関係を考えながら記録すると、新しい発見がありますよ。

『野菜が少なかった次の日は硬くて臭い』
『寝不足の日の朝はいつもの時間に出ない』
『雑穀を食べていると調子がよい』

など、日記の最後には一言感想も書いて、自分の腸内環境の傾向を把握するところから始めてみてくださいね。

腸内環境に着目した腎臓病の治療法

健康な人の便を大腸に移植して病気を治療する「便移植」の研究が進んでいます。

透析を遠ざけるための新しい治療法が確立するまで、腸内環境をセルフケアして腎臓を労りましょう！

2024年度版「慢性腎臓病（CKD）治療の最前線」

(きよら通信2021.6月号として配布した内容に追記修正を加えました)