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腎臓病食生活

【2023年最新版】低たんぱく食で腎機能が悪化?腎臓病とサルコペニア

こんにちは。純炭社長の樋口です。

病院が変わったら食事指導も変わってしまった…?

腎臓病とサルコペニアに関するタンパク質の画像
先日、食べる純炭きよらの購入を検討している方からお電話がありました。

その時の雑談で

「今まで通っていた遠方の大病院では1日34グラムのたんぱく制限を指導されていたのに、転院した近所の病院では1日40~50グラムのたんぱく質を摂るように言われた。どっちの医者を信用したらよいのか分からない。」

とおっしゃっていました。

80代の男性で身長は160 cm、eGFRは38くらい。

このところ体重が減って体力の衰えを感じるとのことでした。

たんぱく質はどれくらい食べるのが正解?


eGFR 38ですと慢性腎臓病のステージ3bに相当します。

2014年に日本腎臓学会が発表した「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」では1日のたんぱく質量を、体重1 kgあたり0.6~0.8グラムに制限するように書かれています。

お電話の方の場合、大病院では下限値の0.6グラムを採用して1日34グラムの低たんぱく食を指導し、転院先では上限の0.8を採用して1日45グラム程度と判断したのだと思います。

【2023.10追記】適正なたんぱく質量の基準は刻々と変化している!

しかし、2023年に日本腎臓学会が発表した『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』では、低たんぱく食の問題点が指摘されています。

【問題点1】
高齢者が長期間、低たんぱく食を続けると
 ・BMIの低下(痩せてきてしまう)
 ・摂取カロリーの不足
につながり、これによって”異化亢進(足りないエネルギーを筋肉を分解して補う)”が進んで、筋肉が減るなど、体の状態の悪化が懸念される。
診察
【問題点2】
低たんぱく食について、患者側の理解が不十分であることが多く、医療機関と患者間で十分な指導が行えず、必要以上に過度にたんぱく質制限をしてしまっている場合がある

(例:0.8グラム食べているつもりが、実際は0.4グラムしか食べていない)。

2023年版のガイドラインでは、適切なたんぱく質量に巡り合えた時には、慢性腎臓病の進行を抑制することも期待できるが、低たんぱく食品が美味しくなかったり、高価である点も含めて、適切な低たんぱく食を続けることは(実際には)難しいと指摘しています。

たんぱく質が少ないほど腎臓を守れるわけではない?


たんぱく質が腎臓に負担をかけるのであれば、「食べる量を減らせば減らすほど透析を遠ざけられる」と思いこんでいませんか?

実は、「たんぱく質摂取量と腎機能低下の間には、何の関係もないのでは?」という考え方が広まりつつあります。

腎機能はクレアチニン値で判断されます。
そして、クレアチニン値は筋肉量に比例して増減します。
低たんぱく食を続けて、筋肉量が減ったら、クレアチニン値も低下するでしょう。
しかし、それは腎機能の回復といえるのでしょうか?
パソコン上の検査数値だけを見ていて、私の全身状態は診てもらえていない……という状況は避けたいものです。

そんな状況を想定したのか?、2019年、日本腎臓学会は以下のような新しい食事療法を提言しました。

サルコペニア・フレイルを合併した慢性腎臓病の食事療法の提言!

腎臓病と寝たきりの深刻な問題
サルコペニアやフレイルってなに?聞いたことない…という方も多いかと思います。

ひとことで言うと

筋肉量と筋力が低下

次第によぼよぼ歩きに

階段の昇り降りがきつくなり

最悪の場合には”転倒→骨折→寝たきりや車椅子生活に”なる

健康寿命を損なう重大要因

これがサルコペニア・フレイル(以下サルコペニアで統一)なのです。

低たんぱく食の危険性


腎臓病患者は一般の人よりもサルコペニアに陥りやすく、サルコペニアを合併した腎臓病患者は死亡リスクが高まることがわかっています。

特に高齢の腎臓病患者はたんぱく摂取量が少ないほど死亡リスクが高く、そのリスクは透析になるリスクよりも高いことが報告されています。

更には、「たんぱく質摂取こそが腎機能を保護する」という従来の常識を覆す論文も現れました(Diabetes Care 2022; 45: 35-41)。

たんぱく制限をする基準は?


腎臓病だと何グラムまでタンパク質を食べてもいいの?
腎臓病=低たんぱく食といった画一的な情報があふれています。

しかしながら、その根拠は明確ではありませんでした。

有名なMDRD Study Aという臨床試験では、eGFR 22~55の患者を2群に分け、片方には体重1 kgあたり1.3グラムのたんぱく質を食べるように指導し、もう片方は0.58グラムに制限するよう指導しました。

3年間観察した結果、両群のeGFR低下に差はなかったと報告されています。

たんぱく質を食べた方が腎機能は保護される?



一方で、eGFR 30以上では低たんぱく食の効果は認められないが、eGFR 30未満では低たんぱく食の方がeGFRの低下は抑制されたという報告もあります。
2019年の提言内容をまとめてみると以下のようになります。

1)透析を回避する目的で低たんぱく食を推奨する対象は、
①eGFR 30未満
②eGFRが1年間に3以上低下
③尿蛋白が1.0 g/gCr以上または尿アルブミンが1000 mg/gCr以上
2)eGFR 30未満の患者が透析を回避しつつ、サルコペニアを予防するたんぱく質量は体重1 kgあたり0.8グラム/日を上限とする。
(しかし、0.55と0.8では腎保護効果は変わらないので、私は0.8が適量と解釈しました)。

ところが、2022年になってオランダから驚くべき論文が発表されたのです。(Diabetes Care 2022; 45: 35-41)その内容は、「体重1 kgあたり1.08グラム/日よりもたんぱく質摂取が少ないと腎機能が悪化する」というもの!

医学や科学の世界では、「今日の常識が明日は非常識に変わる」ことが多々あります。
「低たんぱく食で透析を回避できる」という常識が疑われつつある中で、よりよい人生を過ごすためには何をどのように食べるか?が見直される時期に来ていると思うのです。

低たんぱく食の画一的な指導は不適切


腎臓病のタンパク質制限の弊害はどうやって防ぐべきか
日本腎臓学会は「個々の患者の病態やリスク、アドヒアランス(治療方針に対する患者の納得度)などを総合的に判断して、たんぱく質摂取量を指導することが推奨されている。」としています。

自分の状態が
・低たんぱく食によって透析回避が期待できる状況なのか?
・低たんぱく食によるサルコペニアで寿命を縮める可能性の方が高いのか?

両方のメリット、デメリットを考えつつ、食事指導を受けるようにしてくださいね。

次回は「自分でもできるサルコペニア診断」について説明したいと思います。

(参考文献)
日腎会誌 2019 ; 61(5) : 525-556
https://cdn.jsn.or.jp/data/CKD20191107.pdf

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純炭社長:樋口正人 代表取締役社長CEO
中外製薬で腎臓病治療薬(エリスロポエチン)の創薬研究に従事。金沢医科大学医学部腎臓内科非常勤講師を経て、2009年株式会社ダステックを創業。 長期服用を前提とした安心・安全な食用炭「純炭粉末」の研究開発や自社製造を続ける傍ら、腎臓病の知識・腎臓内科の受診のすすめ、腎臓をeGFRで管理することの重要性など、慢性腎臓病患者さんに対する情報発信、啓蒙活動に取り組んでいる。

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この記事を書いた人
純炭社長:樋口正人

株式会社ダステック代表取締役社長。
1985年3月:千葉大学大学院理学研究科生物学専攻 修了
1985年4月:中外製薬株式会社入社。新薬研究所配属腎性貧血治療薬エリスロポエチン(ESA製剤)の創薬に従事。
1998年4月~2001年3月:通産省工業技術院生命工学工業技術研究所(岡修一先生)技術研修員
1999年4月~2008年3月:筑波大学先端学際領域研究センター(山本雅之教授)客員研究員
2007年4月~2014年3月:金沢医科大学非常勤講師
2007年10月:中外製薬退社
2009年5月:株式会社ダステック設立
2015年5月:純炭粉末の米国特許取得(ADSORPTION CARBON, AND ADSORBENT Patent No.: US 9,034,789 B2)
2015年5月:純炭粉末の日本特許取得(吸着炭及び吸着剤 特許第5765649号)

「出す健康法」で健康寿命を延ばすのが夢!
最近は「腎臓にやさしい純炭社長食堂」のシェフとして社員さんの昼食を調理しています(笑)。

「【2023年最新版】低たんぱく食で腎機能が悪化?腎臓病とサルコペニア」への6 件のフィードバック

  • […] ☞腎臓病がサルコペニアになりやすい理由 ≪その1≫食事のたんぱく質不足 特に朝食と昼食のたんぱく質が足りていないことが多いです。1日に何グラムのたんぱく質を摂るべきか?は先日のブログを参考にしていただき、1日3食まんべんなくたんぱく質を摂るようにしてください。メニュー的に難しい場合はエンジョイプロテインのようなカリウムとリンが少ない粉末状のプロテインを使うと便利です。 […]

  • […] えごま油、アマニ油、オリーブオイルに比べたら知名度の低いMCTオイルですが、実は50年以上に渡り、エネルギーを積極的に必要とする慢性腎臓病(CKD)患者や未熟児、高脂肪食を必要とするてんかん患者、消化器系の手術後の栄養補給に使われてきました。最近では高齢者のサルコペニア(低栄養からくる筋力低下や筋肉量低下)の予防にも使われています。 ※サルコペニアについては「知らないと意外に怖い腎臓病のサルコペニア」もお読みください。 […]

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