こんにちは、純炭社長の樋口です。
腎臓に良い食べ物をシリーズで紹介するブログを書いていますが、今回は食べ物からちょっと離れて、おそらくあなたやあなたの家族も知りたいであろう「腎機能改善薬」の開発状況をご紹介します。
☝腎臓病を治す薬はあるの?
病院に行くとお医者様から「腎臓を治す薬はない!」、「このままでは〇年後に透析」と言われしょんぼりした経験はありませんか?
☝でも大丈夫!
腎機能改善薬の研究は着実に進んでいます。早ければ2021年中にも承認されそうな薬もありますし、他の目的で使われている薬の中にも腎機能を回復させることがわかっているモノもあるんです。もうちょっと頑張れば透析を回避できる世の中になるかも知れないので、ストレスをため込まないでくださいね。
☝期待の新薬バルドキソロンメチル
舌を噛みそうな名前ですが、協和発酵キリンが2009年に米国製薬ベンチャーから導入した、まったく新しい切り口で腎機能を回復させる期待の新薬です。ちょっと専門的な話になりますが、バルドキソロンメチルはNrf2(エヌ・アール・エフ・ツー)という細胞内物質を活性化させる薬です。Nrf2は酸化ストレスや炎症を調節する司令塔のようなたんぱく質なので、バルドキソロンメチルがNrf2を活性化させると、酸化ストレスや炎症が抑えられて腎機能が回復すると考えられています。
☝米国の臨床試験では90%の患者でeGFRの改善が認められたが
その後の試験で心不全などの予期せぬ副作用が出現し、2012年に日本での臨床試験が中止となりました。しかし、2014年に患者の安全性に十分配慮することを条件に試験が再開され、2022年3月に終了予定とのことです。
Nrf2活性化薬は腎臓だけでなく、他の臓器に対しても保護的に働いたり、アルツハイマー病の認知機能も期待されています。何事もなければ早ければあと2年以内に承認されるのでもう少し頑張りましょう!
☝既に糖尿病治療で使われているSGLT2阻害薬
あなたが糖尿病なら、カナグル・フォシーガ・ジェディアンスという薬が処方されているかも知れません。これらはSGLT2(エス・ジー・エル・ティー・ツー)阻害薬という薬で、尿中にどんどんブドウ糖を捨てて血糖値を下げる作用があります。
作用メカニズムは明らかではありませんが、eGFRの低下を改善し、心不全に対しても良い効果をもたらす結果が報告されています。
尚、副作用としては尿中の糖分が高くなり細菌が増殖しやすくなる尿路感染症があります。
☝既に高血圧治療に使われているミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
血圧を下げる薬(降圧剤)を飲んでいませんか?あなたが糖尿病で尿蛋白も出ている場合、ミネブロという降圧剤が処方されていたら、あなたの主治医はおそらく素晴らしい勉強家だと思います。
ミネブロに代表されるミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、数ある降圧剤の中では(今のところ)日陰者的な扱いで、糖尿病性腎症患者の多くはレニン・アンジオテンシン系阻害薬やカルシウム拮抗薬、利尿薬が使用されています。
ところが、2020年10月、世界一の医学誌と言われるN Engl J Medに「尿蛋白陽性の2型糖尿病患者に対してミネラルコルチコイド受容体拮抗薬をレニン・アンジオテンシン系阻害薬に追加投与すると腎機能低下が抑制できる」という研究結果が報告されたとのことです(出典:メディカルトリビューンオンライン、2020年12月2日記事)。
バルドキソロンメチルは未承認薬なので臨床試験に参加しなければ使用できません。しかし、SGLT2阻害薬とミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は既に臨床現場で使われている薬なので、適応症(糖尿病や高血圧症)に当てはまれば保険適応で処方してもらうことが可能です。但し、腎機能改善薬としては臨床試験が進んでいる状況なので保険適応にならない点にご注意ください。
最近のコメント