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腎臓病生活習慣

【2022年版】温泉入浴は慢性腎臓病(CKD)の治療や予防に効果がある?

こんにちは。純炭社長の樋口です。

慢性腎臓病に対する期待の新薬として、SGLT2阻害薬フォシーガMR受容体拮抗薬フィネレノンの話題を紹介してきましたが、今回は「温泉や入浴が腎機能の悪化を抑制するかもしれない」という風呂好きにはうれしいお話です。

温泉入浴と病気の関係は?

猿 温泉
環境省のパンフレット「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」には、温泉入浴は疲労回復だけでなく、喘息やアトピー性皮膚炎、関節リウマチ、不眠症、うつ病といった様々な病気に対して治療効果があると書かれています。また、各病気に適した泉質もパンフレットにまとめられています(残念ながら慢性腎臓病に効く泉質情報は載っていません)。
では、温泉入浴は慢性腎臓病(CKD)の悪化を抑制したり、透析導入を予防する効果はあるのでしょうか?また、慢性腎臓病(CKD)に適した泉質はあるのでしょうか?
環境省がまとめた温泉の効果効能パンフレット
【参考】あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは -環境省

温泉入浴は病気を予防する?

温泉の健康効果
2021年6月10日~13日に開催された第58回日本リハビリテーション医学会で、九州大学病院別府病院内科の前田豊樹先生が「温泉の入浴習慣と疾病予防」という演題で”温泉入浴で病気は予防できるのか?”という研究結果を報告したそうです(出典:メディカルトリビューン2021年7月6日記事)。

温泉の源泉数世界一位の別府市は高齢者人口が多く、温泉入浴と病気の関係を調べるにはうってつけの地域!。そこで前田先生らは65歳以上の別府市民2万人に対して2012年~2015年にわたってアンケート調査を行い、有効回答9,252人のアンケート結果を解析しました。

温泉好きの別府市民は病気が少ない!

別府市民だけあって、調査対象の約半数は毎日温泉を利用し、入浴時間は10~20分程度が多かったそうです。面白いことに別府に住んでいても温泉をほとんど使わない人たちが約1/4程存在したため、温泉入浴者と非入浴者に分けて病気の頻度を調べました。

その結果、男性では温泉入浴者で以下の病気が有意に少なかったそうです。

・虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)
・不整脈
・脂質異常症
・うつ病
・慢性肝炎
・アレルギー

一方、温泉入浴の女性は高血圧と腎臓病が少なく、糖尿病が多いという結果でした。(※有意差はつかなかったものの、男性でも腎臓病が少ない傾向は認められています。(P=0.057)
【参考】温泉入浴に疾病予防は期待できるか —メディカルトリビューン2021年7月6日記事(記事を読むには無料会員登録が必要です。一般の方でも会員登録できます)。

この結果からわかることは

この結果は「温泉入浴は腎臓病を予防する」ように見えますが、ひょっとすると腎臓病と診断された方が温泉入浴を控えた結果、「温泉非入浴者には腎臓病が多く、温泉入浴者には腎臓病が少ない」という結果になった可能性もあります。そこで、入浴と腎臓病の関係を調べてみた結果、とても興味深い研究結果が見つかりました。

入浴習慣で腎機能回復の可能性あり!

温泉に入る女性
熊本保健科学大学内部障害リハビリテーション研究室の飯山準一教授は、自らが慢性腎不全から血液透析に入り、その後に腎移植を受けた経験を持つ医師であり研究者です。
九州・沖縄地方は他の地域に比べて透析患者が多いことに疑問を抱いた飯山先生は「温暖な地域ではシャワー入浴が多く、しっかり体を温める機会が少ない。もしかすると入浴習慣が腎機能に影響しているのではないか?」との仮説を立てて研究を始めました。

腎不全のマウスに温熱療法を施すと

研究を進める過程で、87%の腎臓組織を切除した腎不全マウスに温熱療法を施したところ、温熱療法によって腎機能障害が劇的に軽減されることを見出したのです(詳細は下記リンク先の動画「入浴習慣は腎臓病に有効か」をご覧ください)。

人間にも温熱療法は効果あり?

現在、人間でも同じ結果が得られるのか?を確認するために疫学研究プロジェクト「生活習慣と慢性腎臓病」が実施されていますが、飯山先生おすすめの入浴法は「41℃のお湯に10分間つかる」だそうです。但し、いきなり41℃で10分入浴すると疲れてしまうので、無理をせずに徐々に体を慣らしていくのがコツとのこと。温泉である必要はないので今日から手軽に試せますね。

【参考】
動画「入浴習慣は腎臓病に有効か」-くまもと県民テレビ(kkt!医療ナビDr.テレビたん)
Mild systemic thermal therapy ameliorates renal dysfunction in a rodent model of chronic kidney disease. -Am J Physiol Renal Physiol. 2016 Jun 1;310(11):F1206-15
疫学研究プロジェクト「生活習慣と慢性腎臓病」 -熊本保険科学大学内部障害リハビリテーション研究室

シャワーと入浴の違い(2022年追記)

シャワー
シャワーと入浴の違いは深部体温が上がるか否か、水圧による腎血流量の増加にあるようです。

深部体温の上昇

41℃のお湯に10分間つかると深部体温が1℃上昇するとのこと。深部体温の上昇は免疫能にも良い効果を発揮すると言われているので、このご時世には腎臓以外の効果も期待できそうですね。
【参考】体温を上げて 免疫力アップ ⁻サワイ健康推進課

水圧による効果

湯船につかることによって体の表面に水圧が加わり、皮膚の毛細血管が圧迫されます。それによって全身の血行が良くなり、腎血流量も増加してeGFRが上昇するそうです。
【参考】
普段、入浴はシャワーにしていますが、湯船につかった方が良いと言われました。その理由を教えてください。-千葉県
温浴の腎機能への効果 -日本温泉気候物理医学会雑誌

まとめ

入浴
ブログタイトルには「温泉入浴」と書きましたが、腎臓への作用メカニズムを考えると、温泉である必要は全くなく、自宅で湯船につかれば同じ効果が得られることになります。
首までゆったりとお湯につかった方が深部体温が上がりやすく、水圧の作用も強くなるのですが、血圧が高かったり、心臓に持病がある場合は半身浴にするなど、入浴方法を主治医の先生に相談してみて下さいね。

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純炭社長:樋口正人 代表取締役社長CEO
中外製薬で腎臓病治療薬(エリスロポエチン)の創薬研究に従事。金沢医科大学医学部腎臓内科非常勤講師を経て、2009年株式会社ダステックを創業。 長期服用を前提とした安心・安全な食用炭「純炭粉末」の研究開発や自社製造を続ける傍ら、腎臓病の知識・腎臓内科の受診のすすめ、腎臓をeGFRで管理することの重要性など、慢性腎臓病患者さんに対する情報発信、啓蒙活動に取り組んでいる。

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この記事を書いた人
純炭社長:樋口正人

株式会社ダステック代表取締役社長。
1985年3月:千葉大学大学院理学研究科生物学専攻 修了
1985年4月:中外製薬株式会社入社。新薬研究所配属腎性貧血治療薬エリスロポエチン(ESA製剤)の創薬に従事。
1998年4月~2001年3月:通産省工業技術院生命工学工業技術研究所(岡修一先生)技術研修員
1999年4月~2008年3月:筑波大学先端学際領域研究センター(山本雅之教授)客員研究員
2007年4月~2014年3月:金沢医科大学非常勤講師
2007年10月:中外製薬退社
2009年5月:株式会社ダステック設立
2015年5月:純炭粉末の米国特許取得(ADSORPTION CARBON, AND ADSORBENT Patent No.: US 9,034,789 B2)
2015年5月:純炭粉末の日本特許取得(吸着炭及び吸着剤 特許第5765649号)

「出す健康法」で健康寿命を延ばすのが夢!
最近は「腎臓にやさしい純炭社長食堂」のシェフとして社員さんの昼食を調理しています(笑)。

「【2022年版】温泉入浴は慢性腎臓病(CKD)の治療や予防に効果がある?」への2 件のフィードバック

  • 匿名(ブログに頂戴したコメントは原則として匿名で公開させていただいております) より:

    樋口社長さま
    毎回情報提供頂きありがとうございます。感謝しております。
    早速10分入浴を始めます。

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