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腎臓病における腸内細菌と低たんぱく食とクレアチニン

こんにちは。純炭社長の樋口です。いま読んでいるコノ本は実に面白く、ダステック内でちょっとしたブームになっています。

字が小さくて300頁以上あり、情報量も多いので読破するのに時間がかかりますが、いずれ書評ブログで紹介しますね。

ヒトは食べた物でしか作られないと言います。筋肉をつけるために良質のたんぱく質を食べ、ボケないためにオメガ3脂肪酸が豊富なエゴマ油を摂っている方は多いはず。しかし、我々の体内に共生している細菌類(実はヒト細胞数の9倍もの細菌たちが我々の体内には棲んでいます)を意識して食事を摂っている方はどれくらい居るでしょう?この本を読むと、細菌たちのためにも食べるものをえらばなくちゃ!と思えるようになります。

腎臓に良い食べ物を腸内細菌的に考えてみると…

1.慢性腎臓病で低たんぱく食が推奨される理由とは


腎機能が低下すると様々な食事制限をすすめられます。
・血圧をあげないように食塩を控えて下さいね。
・心臓が突然止まってしまわないようにカリウムを控えて下さいね。
・血管が骨のように固くなる石灰化を防ぐためにリンを控えて下さいね。
では、たんぱく質を控える理由は何なのでしょう?

その答えは、
1)腎機能を低下させるインドール化合物やパラクレシル硫酸といった尿毒症物質はたんぱく質を原料にして作られるからです。しかも、その役割をになっているのは腸内細菌なのです。
2)また、たんぱく質には「リン」が多く含まれるので減らした方が良いと説明されることもあるようです。

たんぱく質を減らすと悪玉菌の餌が減るので、尿毒症物質の生産量が減り、腎臓への負荷は軽減されます。でも、たんぱく質って食べないとどうなってしまうのでしょう?

 

2.体内のたんぱく質の出入りを見てみよう!

ヒトの体内にあるたんぱく質量は7~10 kgに保たれています。


上の図にあるように、毎日70 gのたんぱく質が尿や便として捨てられます。
一方で毎日180 gのたんぱく質が新しく作られています。
ということは、ヒトは毎日70+180=250 gのたんぱく質が必要な訳です。

ところが、一般的な日本人のたんぱく質摂取量は毎日70 g程度なので、180 g分足りません。そこで、人体は何をするかというと、自分の細胞や組織を分解して足りないたんぱく質を補って収支バランスを保っているのです。

 

3.低たんぱく食で何がおきるのか?


食事から入ってくるたんぱく質量を減らすと、自分の細胞や組織を分解する量を増やす必要があります。筋肉を分解してたんぱく質を補うと、筋肉量はどんどん減っていきます。筋肉量が減りすぎると寝たきりの原因になったり、リンを筋肉中に蓄えられなくなり高リン血症になる可能性もあります。
ここで、血液中のクレアチニンは筋肉量に比例することを思い出して下さい。
クレアチニンは筋肉のエネルギー源であるクレアチンの分解物なので、筋肉量が減れば血中クレアチニン値は低下します。eGFRは血中クレアチニン値で計算するので、eGFRは上昇します(腎機能が回復したように見えます)。

このような状態では、低たんぱく食によって尿毒症物質が減ったために腎機能が回復したのか?単に筋肉量が低下しただけで腎機能は変化していない(或いは悪化している)のかわかりません。そこで、筋肉量に影響を受けない腎機能評価方法として血中のシスタチンC測定が開発されたわけです。

 

4.腸内環境を整えることで腎臓を守ることができる?


冒頭の書籍に書かれているように、肥満や糖尿病などの多くの病気で腸内細菌の異常が見つかっています。最近の研究で慢性腎臓病小児のネフローゼ症候群でも腸内細菌が変化していることがわかってきました。

低たんぱく食は尿毒症物質を作る悪玉菌の餌を減らすことに意義があるわけですから、仮にたんぱく質を十分に食べたとしても、尿毒症物質ができにくい腸内環境や、尿毒症物質を血液中に取り込み難い腸内環境を作ってやれば、筋肉を減らすことなく腎臓を守ることができるはずです。

クレメジンのような吸着炭は尿毒症物質の吸収を抑える目的で創薬された医薬品ですし、東北大学の阿部先生が発見した便秘薬(ルビブロストン)による慢性腎臓病進行抑制も尿毒症物質を腸の中に滞留させずに排泄させてしまうという治療方法です。

次なる課題は、どのような腸内細菌を増やして、どのような腸内細菌を減らせばよいのか?その方法は?だと考えています。

成人の慢性腎臓病では腸内の乳酸菌、ビフィズス菌、プレボテラが減っており、ブラキバクテリウム、カテニバクテリウム、エンテロバクテリアが増えており、小児の透析患者ではバクテロイデスが増えているといった研究がすすめられています。

食物繊維やオリゴ糖、発酵食品には善玉菌を増やして悪玉菌を減らす作用があると言われています。既に腎機能が低下している場合にはカリウムやリンの含有量に気をつけながら、これらの成分を補給すると良いのかもしれません。
(厳しいカリウム制限がある場合には、カリウム含量がすくない難消化性デキストリン(水溶性食物繊維)、イヌリンやフラクトオリゴ糖、結晶セルロース(不溶性食物繊維)などのサプリメントもあります。)

 

5.ところで「リン」の問題は?


リンの問題は奥深いので別のブログで書きたいと思いますが、たしかにリンの摂り過ぎは良くありません。リンは肉や魚、卵に含まれる有機リンと加工食品などに含まれる無機リンの二つの形で体内に入ってきます。
有機リンの吸収率は40~60%ですが、
無機リンの吸収率は100%!

慢性腎臓病の方は、食事指導でハム・ソーセージ・練り物などの加工食品やコンビニのサラダなどには無機リンが沢山使われているので控えるようにと指導されていると思いますが、裏面に書かれている「pH調整剤」「乳化剤」「ベーキングパウダー」「膨張剤」などが無機リンなので注意して下さいね。

 

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純炭社長:樋口正人 代表取締役社長CEO
中外製薬で腎臓病治療薬(エリスロポエチン)の創薬研究に従事。金沢医科大学医学部腎臓内科非常勤講師を経て、2009年株式会社ダステックを創業。 長期服用を前提とした安心・安全な食用炭「純炭粉末」の研究開発や自社製造を続ける傍ら、腎臓病の知識・腎臓内科の受診のすすめ、腎臓をeGFRで管理することの重要性など、慢性腎臓病患者さんに対する情報発信、啓蒙活動に取り組んでいる。

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この記事を書いた人
純炭社長:樋口正人

株式会社ダステック代表取締役社長。
1985年3月:千葉大学大学院理学研究科生物学専攻 修了
1985年4月:中外製薬株式会社入社。新薬研究所配属腎性貧血治療薬エリスロポエチン(ESA製剤)の創薬に従事。
1998年4月~2001年3月:通産省工業技術院生命工学工業技術研究所(岡修一先生)技術研修員
1999年4月~2008年3月:筑波大学先端学際領域研究センター(山本雅之教授)客員研究員
2007年4月~2014年3月:金沢医科大学非常勤講師
2007年10月:中外製薬退社
2009年5月:株式会社ダステック設立
2015年5月:純炭粉末の米国特許取得(ADSORPTION CARBON, AND ADSORBENT Patent No.: US 9,034,789 B2)
2015年5月:純炭粉末の日本特許取得(吸着炭及び吸着剤 特許第5765649号)

「出す健康法」で健康寿命を延ばすのが夢!
最近は「腎臓にやさしい純炭社長食堂」のシェフとして社員さんの昼食を調理しています(笑)。

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