出口が見えない今だからおすすめしたい「夜と霧」【書評】(難易度:やや難解)

投稿日: カテゴリー 【純炭社長のつぶやき】

こんにちは。純炭社長の樋口です。
フェイスブックを使っている方にはおなじみの「7日間ブックカバーチャレンジ」という企画があります。自分が紹介したいと思う本の表紙写真をフェイスブックにアップして、本の内容や感想を7冊分書き込み、更に(7人の)友達にバトンタッチするという企画です。

読書傾向というのは、その人の生い立ちや考え方、価値観を如実に表すと思っているので、バトンが回ってきても丁重にお断りしていますが、今日は1冊だけ心に残っている本をご紹介したいと思います。


(みすず書房、夜と霧、ISBN 4-622-00601-4、定価1980円)

表紙の写真はナチスドイツ軍に連行されるユダヤ人家族。
ヴィクトール・E・フランクル著「夜と霧」の原題は「強制収容所における-心理学者の体験」であり、アウシュビッツに収容され奇跡的に生還した精神科医の体験談が記されています。

☞なぜいま、この本を知ってほしいのか

第三次世界大戦とも言われるコロナ禍において、日常生活を奪われ、苦難を強いられている現状が(程度の差こそあれ)アウシュビッツの囚人たちの境遇に似ていると感じたからなのです。暫定的に5月6日までと言われていた日本全国の緊急事態宣言が延長され、いつになったら自由に外出できるのか?いつになったら仕事や営業を再開できるのか?多くの人々が不安に押しつぶされそうになっています。そんな時に思い出したのが本書に書かれていた、こんなエピソードです。

☞希望と絶望

アウシュビッツに収容されていた囚人Fは1945年2月のある夜、夢の中で神のお告げを聞きます。
神『なんでも願いがあれば願いなさい、知りたいことがあるなら何でも答えます』
F『私にとって戦いはいつ終わるか知りたい。いつ収容所を解放されるか、この苦しみはいつ終わるのか?』
すると神は3月30日と具体的な日付を告げます。
Fはこの夢を正夢だと信じ、希望をもって収容所暮らしを続けていたのですが、お告げの日が近づいても戦況は変わらず、解放される見込みは薄いことが分かってくると、3月29日に高熱で倒れ、30日に意識を失い、31日に発疹チフスで死亡します(Fの希望とは違うかたちでお告げ通りになったのです)。

一方で、強制収容所の医長はクリスマスと新年の間の週には、異常なほどに大量の死者が出ることに気づいていました。死亡原因は寒さや食料不足、伝染病などでは説明がつきません。『クリスマスには家に帰れるという、ありきたりの素朴な希望にすがっていた』ことへの絶望が免疫力を低下させ、体内に潜んでいた病原菌によって命を落としたと考えられたのです。

☞今、我々もアウシュビッツの囚人と同じような状況

いつになったら?どんな状況になったら?コロナ禍が収束して平穏な日常が戻ってくるのかわかりません。だからこそ、〇月〇日には非常事態宣言が解除されるに違いない!などという根拠のない希望を抱くことは(夢も希望もないと思うかもしれませんが)やめておいた方が良いと本書は教えてくれるのです。
コロナ禍で旅行も外食もできず、パチンコにも行けず、収入を得ることすら難しい状況の中で、「生きる希望も楽しみも失った」という声が聞こえてきます。コロナに限らず、腎臓病やガンなど、様々な逆境を生き抜くためには『生きる意味についての問いを180度方向転換すること』が必要だと筆者は書いています。

☞生きるとは何か

私たちは「どこから来て、どこに行くのか?」「なぜ生きるのか?」を常に(意識していなくても)問いながら生きています。新しい技術を開発するために生きている人もいれば、目の前の患者を救うために生きている人、家族を守るために生きている人、美味しいものを食べるために生きている人、ギャンブルで大儲けするために生きている人などなど、究極的には人生に「やりがい」や「快楽」を求めて生きているように思います。
しかし、アウシュビッツのように生きる意味を奪われ、人間として扱われない環境の中で生き延びるためには『生きる意味を問うことをやめ、わたしたち自身が問いの前に立っていることを思い知る』ことが必要であると書かれています。言い換えると、「人生に夢や希望を求めて生きるのではなく、人生が突き付けてくる課題に適切に対応し続けることが生きることの本質」ということだと理解しています。

☞人生の苦しみとは

大学を卒業して4月から新社会人として夢と希望と不安を抱えて上京した若者が、コロナ禍によって内定取消になったとします。著者フランクルはこのように声を掛けるでしょう。『具体的な運命が人間を苦しめるなら、人はこの苦しみを責務としなければならないだろう。人間は苦しみと向きあい、この苦しみに満ちた運命とともに全宇宙にたった一度、そしてふたつとないあり方で存在しているのだという意識にまで到達しなければならない。だれもその人から苦しみを取り除くことはできない。だれもその人の身代わりになって苦しみをとことん苦しむことはできない。この運命を引き当てたその人自身がこの苦しみを引き受けることに、ふたつとないなにかをなしとげるたった一度の可能性はあるのだ

哲学書のような難解さはありますが、こんな時だからこそ読み応えのある本だと思います。なお、夜と霧には強制収容所の写真などが掲載された初版本と新訳新編集本(新版)の2種類があります。本ブログの引用部分は新版から引用しました。


新版(ISBN 4-622-03970-2、定価1650円)

2020年5月15日追記:今日から39県で非常事態宣言が解除されました。感染拡大をいち早く抑え込んだ台湾の衛生福利部疾病管制署から「新型コロナウイルスは無症状感染時から発症後5日の間に他人に感染し、発症6日以降はほとんど感染しない!」という興味深い論文が発表されたとのことです(出典はメディカルトリビューンWeb版5月14日記事)。朝起きて、あれ?喉が痛い?熱がある?と思ったら1週間は会社を休んでステイホームした方が良さそうです。

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純炭社長

投稿者: 純炭社長

純炭粉末の(株)ダステック代表取締役社長。中外製薬で腎性貧血治療薬エリスロポエチン(ESA製剤)の創薬に携わった後に、ESA製剤が不必要になる世の中(すなわち腎臓病が無くなる世の中)を目指して47歳で起業しました。元金沢医科大学腎臓内科非常勤講師。ケトジェニックダイエットシニアアドバイザー・AGE研究協会認定講師でもあります。「出す」健康法で健康寿命を延ばすのが夢! 最近は「腎臓にやさしい純炭社長食堂」のシェフとしてサラメシも提供しています(笑)。

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