七つの大罪|ファスティング6日目

seven1996年に公開された映画、ブラッド・ピット主演のセブンをご存知でしょうか?キリスト教の「七つの大罪」をモチーフにしたサイコ・サスペンス映画です。

七つの大罪は、4世紀のエジプトの修道士エヴァグリオス・ポンティコスが著した八つの枢要罪が起源とされているようです。

 

罪が重い順に並べると、
「暴食」
「色欲」
「強欲」
「憂鬱」
「憤怒」
「怠惰」
「虚飾」
「傲慢」
となり、「暴食」が最も罪が重いことになっています(映画セブンをご覧になった方はお分かりでしょうが、最初の被害者は「暴食」でした)。

「大罪」という言葉は「罪」そのものを指すのではなく、人間を罪や悪に導く可能性がある欲望や感情を表しているようです。

「暴食」とは対極に位置する「断食」がキリスト教・仏教・イスラム教・ヒンズー教など宗教・宗派をまたいだ共通の行為として受け継がれてきた背景には、豊かすぎる食生活が肉体的にも精神的にも人間を悪い方向へ導いてしまうことへの恐れがあったのではないでしょうか。

ところが、現代人は七つの大罪を忘れ飽食の時代を謳歌し、その結果、生活習慣病やうつ病のような精神疾患も急増しています。「親の心、子知らず」という言葉がありますが、先人の教えは大抵が正しいと思うのです。

古代のエネルギー源であるケトン体で動き出した脳が徒然なるままに考え出した文章をしたためつつ、ファスティング6日目に突入した身体データは・・・・体重が82,2 kg(マイナス5.5 kg)、血圧は114, 71でした。

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気分爽快|ファスティング5日目

kanazawa131023女性スタッフにいじられながらファスティングを続ける(健気な)純炭社長の樋口です。今日はM子のブログ担当日なので軽めに現状報告です。

なんと、今朝眼覚めた時から気分爽快、体も軽い(最後に食事をとってから86時間目です)。一足先にファスティングを始めたお仲間から「4日目位から気分も身体も軽くなって何日でもファスティングが続けられるようなハイな気分になるよ」と言われてはいたのですが、昨日まで体はダルイは、肩はこるは、頭はボーとするはで、絶対にウソだと思っていました(先輩、ごめんなさい)。

ところが今朝になって状況は一転。あまりの気分の良さに6時半に出社して、会社のまわりを30分散歩してしまいました。朝もやに煙る金沢市街を眺めながら日本海から流れてくる新鮮な空気をいっぱいに吸い込む。なんて健康的!ケトン体代謝に脳が順応した証拠でしょうか?

さて、ファスティング中は風呂に入らずにシャワーにとどめよ!という注意書きがネット上に書かれています。これは何故なんだろう?私は初日・2日目ともにたっぷり半身浴をしてしまいました(だってYouTubeで見た外国の絶食療法病院には温泉もありましたから・・・)。
しかし、自分の血圧がどんどん下がっていくのを目の当たりにして考えました。ひょっとしたらファスティングによって血管が拡張しており、風呂に入ると更に血管が拡張して低血圧で倒れるのではないか?

血圧が上昇するメカニズムは、1)血管が収縮する、2)血液の量が増える、の二つです。血管を拡張させて血圧を下げる因子としてNO(一酸化窒素)があります。そこでファスティングとNOについて調べてみました・・・・

ありました!。
昨日のブログで紹介したファスティング時の腸管絨毛組織の細胞死にNOが関与していることが城西大学薬学部から報告されていました。ファスティングによって腸管内でNO合成酵素が増加するそうです。ということは、血管でもNO合成酵素が増える可能性がある?あるいは腸で作られたNOが血管内に運ばれて血圧を下げる?妄想は尽きません。

私の血圧変化は
収縮期血圧が144→141→133→123→120
拡張期血圧が97→91→86→72→69
先にご紹介したファスティング仲間は降圧剤を使わなくて良くなったそうですよ。
私も7日間のファスティング目指して頑張ります。

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断食後の突然死はなぜ?|ファスティング4日目

注意!本ブログ記事は皆様にファスティング(絶食・断食)を勧めるものではありません。
安易なファスティング(絶食・断食)は命にかかわる危険性があります。
糖尿病の方は断食期間中にケトシドーシス(血液の酸化)に陥ったり、食事を再開する方法を厳密に管理しないと死に至る危険性がありますので十分ご注意ください。

水だけのファスティングに突入して4日目に入りました。この時期から安定期にはいり気分的にも変化が現れるとのことですが、今のところ頭のシビレ感は取れません(明日の朝に期待です)。

さて、ファスティング終了直後に食べ過ぎて突然死する!という話を良く聞きます。その理由が知りたくて調べていますがよく分かりません。

腸捻転や腸閉塞というのは(なんとなく)理解できます。消化管は食事の刺激で運動を始めますが、長時間休眠していた消化管に大量の食物が流れ込んだらビックリして異常な運動を起こしそうです。

一方、ファスティングで浄化された体に食物由来の毒素が一気に吸収されるため!との説もあります。最初はホンマカイナ!?と思っていましたが、それを支持するような情報を見つけてしまいました。

下の写真は腸の栄養吸収や免疫に関係する絨毛組織です。
腸絨毛
この絨毛組織は活発に分裂と細胞死を繰り返していて、3日ほどで全く新しい細胞に置き換わってしまいます。

ところが、中心静脈栄養という点滴で栄養補給する治療法を施し、腸に食べ物が入らなくなると細胞分裂が止まってしまい、3日ほどで絨毛組織が短くなったノッペリ平べったい腸に変わってしまうというのです。

しかも、絨毛が短くなった腸からは細菌や毒素といった異物が侵入しやすくなり、敗血症を起こして死んでしまうこともあるとかshock(今ではよく聞くリーキーガットですね:2020年3月追記)

佐賀医大消化器内科の研究では、絶食したラットの腸管では絨毛細胞の細胞死が増え、逆に新しい細胞分裂は抑制され、絨毛が短くなることが証明されました。ところが、絶食ラットに消化不能な固形物(この研究では発砲スチロールが使われていました)を食べさせると、絨毛の短縮が抑制された!というのです。

詳細に調べてみると、固形物による(物理的)刺激は細胞死を抑制していることが分かりました(細胞分裂を促すためには栄養素が必要らしい)。とすると、消化不可能な純炭粉末を飲んでいる私の選択は間違いではなかった?
2020年3月追記:断食中は餌を失った腸内細菌が腸のムチン層(粘液層)を食べ始めるため、絨毛の短縮とムチン層が薄くなることでリーキーガットが加速して、LPS(リポポリサッカライド=敗血症をおこす強力な毒素)などの毒素が血液中に入ってくると予想されます。断食中は腸内毒素を排出する吸着炭と腸内細菌のエサとなる食物繊維だけは摂った方がよいと考えています。

仮に、水だけのファスティングで腸の免疫能(バリア機能)が低下しており、胃酸の分泌も弱まっていたとしたら、食物とともに入ってくる細菌類を殺すことができず、大量の異物を吸収してしまう可能性もありますね。

今日は身体中の細胞がしびれるような感じで確実に変化が起きていることを感じました。座って仕事をしているのが難しく、1時間おきに会社の中を歩き回っていました。

今日の体重は84.0 kg(マイナス3.7 kg)、尿pHは5程度です。血圧は123, 72と正常域で安定しています。明日が楽しみです。

追記:本ブログをかいた2013年当時、私は糖質制限食やケトジェニックダイエットを知りませんでした。また、血中のケトン体を測定する機器も持っていなかったため、必要以上にケトアシドーシスと恐れていました。2014年に江部康二先生に出会い、その後に白澤卓二先生、齋藤糧三先生のケトジェニックダイエットに出会った後は、ファスティング回復食は低糖質の肉スープの方が良いと思っています。

そして、断食中の突然死を回避するためにはこんなサプリメントが良いのでは?と思い、自分で作ってしまったのが「きよらプレミアム」。腸内細菌が飢えて腸管粘膜を食べてしまわないように、人間は消化吸収できないけれど腸内細菌の餌になるイヌリン2000 mgと難消化性デキストリン2000 mgを配合し、更に、ヨーグルト100個分に相当する1兆個の乳酸菌も追加してみました。絨毛短縮を抑制するための消化不能な固形物としては、純炭粉末1000 mgを配合し、物理的刺激と有害物質の除去も狙っています。

 

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Health is a gut issue|ファスティング3日目

注意!本ブログ記事は皆様にファスティング(絶食・断食)を勧めるものではありません。
安易なファスティング(絶食・断食)は命にかかわる危険性があります。
断食期間中にケトシドーシス(血液の酸化)に陥ったり、食事を再開する方法を厳密に管理しないと死に至る危険性がありますので十分ご注意ください。

ファスティング(絶食・断食)3日目に突入した純炭社長の樋口です。
私がファスティングを始めたことを知った女性社員からお菓子攻撃にあいましたが、まだ理性が勝っています(笑)。

さて、本日のブログタイトルは世界的な科学雑誌であるNatureに書かれていたものです。
邦題は”健康は本当のところ、腸の問題”

先日のブログにも書いたとおり、人類の遺伝子は飽食環境には慣れていません。その人類の腸に寄生している細菌たちも(おそらく)しかり!人類(ならびに腸内細菌たち)は、飢餓の環境には適応する能力を持っていても、使いきれないほどの食物に晒されるては、どうして良いのか分からない状態なのではないでしょうか?

2013年8月29日号のNature(Vol.500, No.7464)には、健康は腸の問題であることを示す2つの論文が掲載されています。

E. Le Chatelierらは、腸内細菌の種類の豊かさ(多様性)が少ない人ほど、肥満、インスリン抵抗性(糖尿病)、脂質異常症(高血圧・心血管病)、炎症(アトピーやリウマチ)が見られ、尚且つ、太りやすいことを見出しました。

一方、A. Cotillardらは、食物繊維を多く含む食事で治療された肥満者ほど肥満が解消され、その際には腸内細菌の多様性も増していることを示しました。

これらの報告は食事の内容と腸内細菌の多様性が密接に関係しあって健康を守っていることを示しています。逆を言えば、飽食の時代で過剰摂取しがちな糖分・脂質ならびに食品添加物によって腸内細菌の多様性が損なわれ、様々な病気を引き起こすと考えられないでしょうか。

下の写真は腸に寄生するセグメント細菌。
Th17を介した免疫機能の獲得に大切や役割を果たしています。
セグメント細菌

ファスティングの話に戻ります。

ファスティングで体調が変化するのは、ブドウ糖を使い果たして飢餓状態に陥った体が、脂肪を燃やして作ったケトン体に順応するためではないか?と考えられます。しかし、1週間ほど水だけで生活すると、飽食でダメージを受けていた腸内細菌達が目覚め、多様性が高まった結果、肥満の解消、心血管病やアレルギー疾患、高血圧、消化器疾患の症状が軽減するというメカニズムも働いているのでは?と考えるわけです(あくまでも個人的仮説です)。

さて、ファスティング開始から48時間を超えたあたりから、急に脱力感が襲ってきました。空腹感も一番強く感じています。その他にも肩こり、頭がボーとする、目のかすみなど明らかに変調を感じます。朝は6.5だった尿pHが夜には5.5まで低下していました。今晩から明日がアシドーシス(血液の酸性化)のピークのようです。あ~~つらいshock
体重は84.4 kg(マイナス3.3 kg)、血圧も133, 86と低下傾向です。

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ファスティング(絶食・断食)2日目

注意!安易なファスティング(絶食・断食)は命にかかわる危険性があります。
断食期間中にケトシドーシス(血液の酸化)に陥ったり、食事を再開する方法を厳密に管理しないと死に至る危険性がありますので十分ご注意ください。

こんにちは純炭社長の樋口です。
ファスティング(絶食・断食)を初めて24時間以上が経過しました。
17時間目位に空腹感を感じましたが、10分ほどで治まりました。

今のところ特に辛いことはありません。

人間のエネルギー源はブドウ糖です。
ブドウ糖は肝臓や筋肉にグリコーゲンとして蓄えられていますが、その備蓄量はせいぜい1日分。

昨日と今日で15kmほどのウォーキングをしてきたので私の体内のグリコーゲンは枯渇している予定。

今、私の体内ではタンパク質を分解してブドウ糖を作っているはずです。
(タンパク質は脂肪よりも先に使われ始めます。脂肪からはブドウ糖を作れませんから)

ファスティングによって
喘息などの気管支疾患、
高血圧などの心血管病、
糖尿病などの内分泌疾患、
胃腸障害などの消化器疾患
が治癒するのは、ファスティングによって病気の原因となっている悪いタンパク質が分解されるからだという説があります。しかし、私はこの説には反対です。

なぜなら、通常の食事をしている健康者であっても体内のタンパク質は自己分解をうけているから(これをオートファジーと呼びます)。
一般的な日本人が1日に摂取するタンパク質は70グラム程度です。しかし、体内では毎日200グラムものタンパク質が必要とされるのです。
足りない130グラムはどこから来るのか?

そうです。オートファジーによって自分の体のタンパク質を壊して再利用しているのです。
しかも、どの細胞のどのタンパク質を分解するかはいい加減で、神経細胞以外は心臓の筋肉であっても気まぐれに分解されているようです。

ですから、ファスティングによってオートファジーが活性化してしまったら大切な臓器を自己分解してしまう可能性もあります。
飢餓状態に陥った体は、タンパク質を温存して、脂肪をエネルギー源に使うようになります。

ところが脂肪からはブドウ糖を作ることが出来ませんので、代わりにケトン体というエネルギー源を脂肪から作り出汁ます。
人間の血液は中性に保たれていますが、脂肪の分解が始まり、ケトン体が急激に増えると一時的に酸性に傾きます(この状態をアシドーシスと呼びます)。腎機能が正常であればアシドーシスは補正されるはずですが、この過程が病気の治癒には大切らしい。

アシドーシスの間は頭痛や吐き気など辛い症状が出るようですが、今のところ兆候はありません。
肉を食べてる夢をみるので、今はタンパク質分解のフェーズなのだと思います。

24時間の体重変化は87.7 kg→85.9 kg でした。

引き続き応援お願いします。

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ファスティング(絶食・断食)と健康|初日

注意!安易なファスティング(絶食・断食)は命にかかわる危険性があります。
断食期間中にケトシドーシス(血液の酸化)に陥ったり、食事を再開する方法を厳密に管理しないと死に至る危険性がありますので十分ご注意ください。

こんにちは純炭社長の樋口です。
知人の経営者仲間の間でファスティング(絶食・断食)がプチブームになっています。
火付け役となった長野県の社長さんは今日で6日間の絶食に成功し、明日から復食期間に入るそうです。
その社長さんが紹介してくれたフランス制作の番組がこれ!downwardleft
https://youtu.be/oA-eI2WQLRU
絶食療法の科学

今晩(2013年10月19日)の”世界ふしぎ発見”で紹介された、ロシアの40日間絶食療法もこの番組が元ネタです。

2011年6月のNHKスペシャルで30%カロリー制限が長寿遺伝子(サーチュイン)を活性化することが紹介され、ローカロリーダイエットやレスベラトロールが一大ブームになりました。しかし、ロシア(旧ソ連)では60年前から絶食療法が研究され、驚くべき効果を示していたのです(詳細はYouTube映像をご覧ください)

人類の歴史を365日になぞらえると、農耕を開始したのが12月27日くらい。飢餓から解放され飽食の時代を迎えたのは12月31日午後11時59分59秒だそうです。ですから人類の遺伝子は飢餓に備えるメカニズムは存在しても、飽食には対応しきれていないと考えられます。

私は長年、製薬会社で医薬品の開発に携わってきました。多くの薬は病気の原因物質(や細胞)の機能をブロックするために投与されます。しかし、現在の私は従来の考え方とは真逆な方法で健康を守ろうと考えています。それが病因物質を取り去る、作らせない「引き算による健康」です。
現代人は余分なカロリー(糖質、脂質、蛋白質)や食品添加物・ホルモン剤・抗生物質などを食事として摂取しています。その結果、高血圧・糖尿病などの生活習慣病を引き起こし、更に治療のために多種多様な薬を服用します。本当にこれで良いのでしょうか?常に疑問に思っていました。

そんな中、今回ご紹介した「絶食療法の科学」の内容は衝撃的でした。
(私は以前から腸内環境の乱れが精神疾患に影響すると考えていたので)絶食療法研究のきっかけが統合失調症のような精神性疾患であったことに興味を惹かれた次第です。
衰弱しきった患者に食事を強要せず患者の本能にまかせて自由にさせておいたところ絶食5日目から悲観的態度が薄れ、10日目に歩き始め、15日目には食事を摂り散歩を始めたのです。

ファスティング(絶食・断食)は私が唱える引き算の健康法に合致するものです。
そうとなれば自分で試さないわけにはいきません(皆さんは真似しないでくださいね)。

2013年10月19日(土曜日)の遅めの昼食(15時頃)を最後にファスティングに入りました。
開始時の身体スペックです。
身長:176 cm、
体重:87.7 kg、
BMI:28.5、
体脂肪率:27.4%、
筋肉量:60.2 kg、
骨量:3.3 kg、
内臓脂肪:16.0レベル、
基礎代謝:1786 kcal/日、
(以上はTANITA体組成計データ)
収縮期血圧:144 mmHg、
拡張期血圧:97 mmHg、
心拍数:64
尿pH:約7.2

りっぱなメタボ&高血圧ですがcoldsweats01薬は全く服用していません。

ファスティングの目標は7日間、
口にするのは基本的に(普通の)水のみですが、それでは面白くないので純炭粉末と特殊なオリゴ糖の顆粒(弊社の試作品)を朝晩1回飲んでみます。オリゴ糖は腸内善玉菌の餌になり、純炭粉末は悪玉菌の抑制が期待できるため、腸内細菌叢も若返ってくれるといいな~

今回のファスティングで知りたいことは、
1)尿pHでファスティング中のアシドーシス(血液の酸性化)をモニタリングできるのか?
2)アシドーシスは本当に24~36時間で回復するのか?
3)血圧を下げる効果があるのか?(ファスティング終了後はどうなるか?)
腸内細菌叢の検査は今回は間に合いませんでした。
また、生まれながらのアトピー体質で血液中のリウマチ因子も高値なので炎症マーカーも見たいところですが、採血が難しいため今回は見送りですweep

応援よろしくお願いしますhappy01

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イカ墨は炭に非ず|美白と皮膚がんの関係

こんにちは。
「食べる純炭きよら」を製造販売する(株)ダステック代表のhigumonです。

先週、健康食品を販売する会社の社長さんとお話をして、こんな話題になりました。

A社長「イカ墨を食べると便が真っ黒になりますが、貴社の純炭でも黒くなりますよね」

私「そうですね。確かに純炭を食べると便が黒くなり、便臭が変わります」

私「イカ墨は食べたことがありませんが、体に良いのですか?」

A社長「イカ墨も純炭と同じように吸着作用があるんでしょ?」

私「????」
イカ墨リゾット

A社長と同じ誤解をしている方に時々遭遇します。

実は

イカ墨と純炭は・・・

まったくの別物なんですsign03

純炭の成分は炭素sign01
元素記号はC
カーボンです。

一方のイカ墨は?というと・・・
日焼けの原因、メラニン色素と同じもの。

メラニンは炭素の他に、酸素・水素・窒素が複雑に絡み合ったインドール骨格を持つ物質で、
チロシンというアミノ酸がチロシナーゼという酵素で分解されて作られます。

そういえば、巷で問題になっている美白化粧品のターゲットもメラニンでしたね。

皮膚のメラニンは表皮と真皮の境目にあるメラノサイトという細胞で作られます。
皮膚構造

メラノサイトは皮膚1mm2あたり約1000~1500個存在しますが、意外なことに人種が異なってもメラノサイトの数や分布に違いはないのだそうです。

紫外線を浴びたり、皮膚にストレスが加わると、

プラスミン(タンパク分解酵素の一種:セリンプロテアーゼ、血栓溶解などに働く)や

アドレノメジュリン(血管拡張、細胞遊走、抗炎症など多彩な作用を示す)が、

メラノサイト活性化因子として働き、

銅含有酵素であるチロシナーゼを活性化して

チロシンからメラニンを作り出します。

メラニン輸送

メラノサイトで作られたメラニンはメラノソームというボール状の中に詰められて、

細胞膜の表面に向けて運ばれていきます。

メラノサイトから放出されたメラノソームは、メラニンを欲しがっている他の細胞に運ばれ、

再び細胞内に取り込まれます。

すると、今度はDNAが詰まった核に向かって輸送されて行き、

核の上方に集結してメラニンキャップ(核帽)という構造を形成し、紫外線からDNAを守ります。

生物の仕組みってスゴイですねhappy01

女性には毛嫌いされるメラニンですが、DNAを傷つけないために頑張っていることをご理解いただけたでしょうか?

日焼けの心配がないイカやタコは、別の意味で身を守るためにメラニンを使っているんですね。

チロシナーゼ活性やメラノサイト刺激因子の働きを抑える美白化粧品を使うということは、

DNAが傷つきやすい(皮膚がんになりやすい)状況を作っていることになります。

ですから、日焼け止めをしっかり使って紫外線をカットすることが大切です。

ところが、皮膚科の先生がこんなことを言っていました。

「日焼け止めに書いてあるSPF(Sun Protection Factor)という数値は、

日焼け止めを厚さ2mmに塗った時の値なんです。

ところが、日本人はせいぜい1mm程度しか塗っていない。

これでは効果が無いんです。

外用剤はしっかりと量を使うことがとても大切です!」

美白化粧品は、シミやソバカスの部分だけに使い、

日焼け止め(サンスクリーン)は全身にたっぷり塗って、

大切なDNAを紫外線から守りましょう!

透析に入らないための食生活を考えてみました。

こんにちは。
純炭社長の樋口です。

一週間ほど前に福岡で開催された日本透析医学会に参加して来ました。
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この学会は日本の透析医療に関わる、

医師、看護師、臨床工学技士、製薬会社、透析機器会社、

などなど、

ありとあらゆる透析関係者が集まる巨大学会です。

年に一回開催される学術集会に参加する人数は、

2万人とも3万人とも言われます。

博多のホテルが予約できずに、久留米や小倉から通う会員もいるほど。

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企業の展示も華やかです。

当然のように夜の博多の街も大賑わい。

これだけの学術集会を誘致できれば、

地域経済を大いに潤すでしょうねhappy01

話が脱線してしまいましたが、

数年ぶりに参加した学会は収穫の多いものでした。

基礎研究から始まって、かゆみなどの透析合併症ケア、透析膜やオンラインHDFなど3日間、フルに演題を聞きまくって感じたことは、

近い将来、透析導入は回避できるようになるsign03

という確信でした。

これまで、腎機能を低下される主要因は、

①糸球体高血圧

②インドールのような腸管内で発生する尿毒素

だと言われてきました。

今回の学会では上記に加えて、

③AGEs(終末糖化産物)

④CPP(カルシプロテインナノパーティクル)

という二つの悪役が注目を集めたと思います。

⑤一方で、京都大学の柳田先生らは、尿細管障害によって引き起こされる腎間質の繊維化がタモキシフェン(抗がん剤の一種)によって治療できる可能性を示しました。

①糸球体高血圧はARBのような降圧剤で治療が可能になりました。

②腸管内で発生する尿毒素は悪玉菌が蛋白質を分解して作られるので、クレメジンのような吸着薬で尿毒素を排泄するか、善玉菌優位にする、もしくは蛋白摂取量を減らすといった対策が取られます。

③食事由来AGEsが糖尿病性腎症を悪化させることは1990年代から報告されていました。久留米大学の山岸先生によると、食事から摂取するAGEsを減らすだけで長寿遺伝子が活性化され寿命が延びるとのこと。少し前にカロリー制限すると長寿遺伝子(Sirt1)が活性化され長生きすると話題になりましたが、面白いことに、カロリー制限をしてもAGEsを多く含む食事をとっているとSirt1の活性化は打ち消されてしまうとのことでした。
体内でAGEsが作られないようにすることも重要ですが、食事由来AGEsに気を付けることの大切さを再認識しました。

④Klotho遺伝子の発見者であるサウスウェスタンメディカルセンターの黒尾誠先生からはCPPという新しい悪玉因子の報告がありました。
CPPとはリンとカルシウムが結合したナノパーティクル(微粒子)とfetuin-Aという蛋白質が結合したもので、血管や尿細管の細胞を傷つけます。
リンやカルシウムの摂取量が過剰であったり、糸球体の数が減り、糸球体一個当たりのリン濾過量が増えると原尿中にCPPが増えて、尿細管を傷つけるのではないか?との仮説でした。

⑤京都大学の柳田先生は尿細管障害がきっかけとなって、腎臓の間質を繊維化させる因子が産生されるのでは?と報告していました。
リン・カルシウム代謝の異常によって原尿中にCPPができ、尿細管障害を引き起こすという④黒尾先生の報告とつながります。
さらに、柳田先生は女性に腎不全少ないことに着目して、女性ホルモン(エストロゲン)が腎繊維化を抑制するのでは?との仮説のもとに、タモキシフェンによって腎繊維化を治療できる可能性を見出しました。

①~⑤を考えると、
①やはり塩分摂取を控えて血圧は高くしない方が良いでしょう。
②蛋白質と脂質の摂りすぎは控えた方が良いと思います。合わせて善玉菌を増やして悪玉菌を減らす。腸内でできてしまった尿毒症物質は速やかに排泄する。
③体内でAGEsを作らせないためには、糖分を大量に含む清涼飲料水を控える。食物繊維を食べてから炭水化物を食べて食後高血糖を防ぐ。そして、AGEsを大量に含む加工食品を控える。
④リンを大量に含むインスタント食品や清涼飲料水を控える。
⑤これは仮説に過ぎませんが、タモキシフェン同様、エストロゲン受容体に作用する大豆イソフラボンにも腎繊維化を防ぐ力が有るかもしれません。
ここで注意が必要なのは、イソフラボンは腸内細菌によって分解を受け、エクオールという活性体に変化するということです。
ところが日本人の半数はエクオールを作る腸内細菌を持っていません。
自分がエクオール産生菌を持っているかどうか?は簡単な尿検査で調べることができます。
また、大塚製薬はエクオール産生菌(ラクトコッカス20-92)の単離に成功しましたので、今後はエクオール産生菌と大豆食品を取ることが主流になりそうです。

以上の結果から私が推奨する食事は、
とっても月並みですが、
(塩分を控えた)大豆食品とEPA/DHAを多く含む青魚、たっぷりの野菜と控えめなごはん
という典型的な日本食になってしまいました。
栄養士の先生方のご意見をうかがってみたいものです。

 

純炭社長が解説する糖化(AGE)と腎臓病の関係

こんにちは、純炭社長の樋口です。

今週はAGEと腎不全とのかかわりをご紹介したいと思います。

腎不全とは腎臓の機能が低下してしまう病気です。

腎不全には急性と慢性があり、急性腎不全は比較的治りやすいのに対して慢性腎不全はじわじわと時間をかけて腎機能が低下していき最終的には血液透析を受けなければ生命維持は難しくなります。

この慢性腎不全、

最近では慢性腎臓病(CKD)と呼ばれ、日本人の成人の約8人に1人はCKDと言われています。

その患者数は実に1,330万人sign03

腎機能が低下する原因は、
・自己免疫や薬アレルギー
・高血圧
・糖尿病
などなど様々な原因があります。

しかし、血圧や血糖値が高くても全員が血液透析に至るわけではありません。

では分かれ目は何なのでしょう?

こんな論文があります。

PNAS_AGE

 

 

 

1997年に発表された米国科学アカデミー紀要(PNAS)には経口的に摂取したAGEが糖尿病性腎症のリスクファクターとなることが記載されています。

少なくとも食事由来のAGEは腎臓に負担をかけることは間違いないようです。

金沢医科大学の竹内先生らは非糖尿病性の保存期腎不全(透析予備軍)の患者に

経口吸着炭薬を投与すると、血液中のToxic-AGE(毒性のもっとも強いAGE)が減ることを見出しました。

彼らは食事由来AGEを腸管内で吸着し便中に排泄することが、腎機能低下を抑制するのではないか?と予想しています。

また、PEDF(色素上皮由来因子:pigment epithlium-derived factor)という物質とAGEの関係が注目されています。

腎臓に存在するメサンジウム細胞やポドサイトという細胞はPEDFを作って各種のストレス(酸化ストレス・糖化ストレス)から腎臓を守ろうとしています。

ところが、AGE/RAGE(AGE受容体)が活性化されるとPEDFが作られなくなってしまい、腎臓の炎症や繊維化が進展するのでは?と考えています。

食事由来AGEはAGEとRAGEの結びつきを増やす方向に働くことから、PEDFの産生低下を招くと予想されます。

CKDの腎機能低下を抑制し、透析に入らずに寿命をまっとうできる方法が望まれています。

血液透析は週に3回の通院を余儀なくされ、1回に3~4時間の透析を受けなければなりません。

当然、仕事など社会生活に支障が生じます。

一方、血液透析にかかる治療費は全額公費で賄われるため患者負担はゼロですが、

約37兆円の国民総医療費のうち、4%(1兆円以上)が透析医療に使われています。

CKDから透析に移行するのを防ぐことは、

患者と国の両方にとってとても大切なことなのです。

 

糖化(AGE)がもたらす全身を蝕む病気とは

IMG_0604お医者様が読んでいる雑誌

「医学のあゆみ」の2013年2月23日号に

糖化現象と心血管疾患の特集が組まれました。

このブログでも糖化現象を何度も取り上げていますが、

始めて読んで下さった方のために、最初に用語の説明をさせていただきますね。

まず最初にAGE。年齢を意味する英語と同じくエイジまたはエージーイーと読みます。

正式な名称はAdvanced Glycation Endproducts。日本語では終末糖化産物と訳します。

次にRAGE。読み方はレイジ。Receptor of AGEの略で、日本語ではAGE受容体となります。

心血管疾患とは血管が硬くなって詰まったり破裂したりする病気の総称で、心筋梗塞や脳梗塞などを想像しがちですが、

血管の老化は全身の老化と言われるように様々な病気の原因になっています。

目次をみるとAGE/RAGEが動脈硬化などの循環器病だけでなく、

腎臓病や認知症、多臓器不全といった様々な病気に関係していることが分かります。

IMG_0606このような病気のほかにもAGE/RAGEはがんや炎症といった病気のほか、

皮膚のコラーゲンが糖化(AGE化)すると肌の弾力が失われたり

保湿性が低下してシワやくすみの原因になるとも言われています。

このコラーゲンだけに絞って糖化の影響を考えてみましょう。

コラーゲンは体内のタンパク質の30%を占める大切な成分です。

最もコラーゲンを多く含むのが皮膚(ブタ皮や鳥皮を煮込むと分かりますよね)。

次いで骨や軟骨、血管などの全身臓器という順になります。

骨のコラーゲンが糖化してしまうと骨粗しょう症になり骨折しやすくなります。

軟骨のコラーゲンが糖化すると間接が動きにくくなり変形性関節炎の原因となります。

血管のコラーゲンが糖化すると動脈硬化になって詰まりやすくなったり、破裂しやすくなります。

このようにコラーゲンの糖化は老化とイコールなのです。

油断ですが、ポーラ化粧品のB.Aザクリーム(30クラムで3万円以上するんですよlovely)は日本で初めて?糖化に着目した化粧品として2009~2011年のベストコスメ賞を受賞し有名になりました。

このように日本でも徐々に浸透してきた「糖化」の危険性ですが、

地道に研究と啓蒙活動を続けてきたのが竹内正義先生(現金沢医科大学)。

2004年に発表した  生活習慣病におけるTAGE(toxic AGEs)病因説 は内容がセンセーショナル過ぎたのか専門家の間に浸透するのに時間がかかりましたが、

約10年の時を経て「医学のあゆみ」で特集が組まれ、ひろく臨床医に読まれるまでになったことに感銘を受けます。

これから数回にわたって糖化(AGE)と各種疾患の関係を紹介していきたいと思います。

次回は糖化(AGE)と腎不全の予定です。