こんにちは!
日中の気温がぐんぐん上がってきて、夏本番が近づいてますね。
実は、夏は知らず知らずに腎臓を傷つけてしまうこともある季節。
本格的な夏が到来する前に、こちらのブログで予習して、検査値の悪化を防いでくださいね。
夏の暑さは腎臓病に大敵

暑い季節になると、お客様からのお電話で「クレアチニン値が上がってしまった」「腎臓が悪くなった」「eGFRが低下した」というお声をよく耳にします。論文を検索したところ『脱水症状が繰り返されると慢性腎臓病の危険性が高まる』という文献が複数見つかりました。
腎臓病発症率が高い地域

中央アメリカの中部に位置するニカラグア共和国では、サトウキビ農園で働く人の慢性腎臓病発症率が非常に高いという疫学データ※1-3がありました。
近年では南インドやスリランカ・エジプトでも同様の報告※4があるようです。
なぜ、サトウキビ農園で働くと腎機能が低下するのか?
この原因のひとつとして、「(気候と労働環境から)周期的に脱水症状を繰り返すと腎機能が低下するのではないか」と考えられています。
脱水は腎機能低下の要因

脱水症状がどのようにして腎機能低下をもたらすのか?
マウスを使って実験を重ねた結果、以下のメカニズムが明らかになりました。※5
1.脱水症状 |
2.体内のポリオール経路という代謝経路の活性化 |
3.腎臓で「果糖」が合成 |
4.「フルクトキナーゼ」という酵素が「果糖」を分解する過程で腎臓に傷害をもたらす! |
実験的に脱水症状を起こさせたマウスでは、血清クレアチニン濃度が上昇し,尿中のNGAL(急性腎障害の指標物質)が上昇、物質の再吸収に大切な近位尿細管という組織が傷害され,腎臓の炎症や線維化が見られたそうです。※5
腎臓を大切する上で暑い時期の水分摂取はとても大切なんですね。
暑さと脱水による腎臓へのダメージ

別の論文※6では4週間の間、1日のうちに1時間だけ水分も餌も与えずに36℃の高温(脱水状態)で飼育されたラットの腎機能が調べられました。
脱水で喉が渇いたラットには以下の3種類(A~C)の飲料を与えられていましたがどのグループが一番腎機能が落ちてしまったでしょうか?
A:普通の水 |
B:11%濃度のブドウ糖と果糖の溶液(一般的な清涼飲料の甘さだそうです) |
C:カロリーのない「ステビア(人工甘味料)」で甘くした溶液 |
腎機能を悪化させる飲み物は

答えはB。
Bのブドウ糖と果糖で甘みをつけた溶液は、ラットがたくさん飲んでいたにも関わらず、より強い脱水症状に陥り、腎機能が悪化していました。
Cのステビアで甘みを付けた溶液ではBに比べて腎機能の低下はわずかでしたが、もっとも腎臓に良い飲み物は普通の水!ということですね。
甘い飲み物での水分補給に待った!

先ほどのラットの実験がそのまま人で確認されている訳ではありませんが、腎機能が低下している場合の水分補給は「果糖ブドウ糖液糖」などで甘みをつけたスポーツドリンクやソフトドリンク類は避けた方がよいと思います。
また、スポーツドリンクや経口補水液には塩分も入っているので、多量に飲むと塩分過多で腎機能を悪化させてしまうかも。
甘い飲み物が欲しいときは一気飲みは避けて、1日1本を半日かけて水の合間にチビチビ飲むのがおすすめです。一気飲みすると血糖値が上がって腎臓に負担をかけるAGEもできやすくなりますので。
体に良さそうな青汁・野菜ジュースは腎臓に良い飲み物?(2021年6月追記)

「野菜不足には青汁」とか「1日分の野菜がとれる野菜ジュース」といった宣伝文句をよく聞きませんか?でも、血液検査でカリウムやリンが正常範囲を超えている場合は注意が必要です。青汁や野菜ジュースを生活に取り入れる場合は、カリウムやリンの含有量をメーカーに問い合わせてくださいね。特に「ミネラル豊富」とうたっている商品は要注意ですよ。
なた豆茶は腎臓に良い飲み物?(2022年6月追記)

「クレアチニンを下げると聞いたのでなた豆茶を飲んでいる」というお客様の声をよく耳にするのでちょっと調べてみました。
なた豆茶の機能性成分は |
1) |
カナバニン |
2) |
コンカナバリンA |
3) |
ウレアーゼ |
4) |
ミネラル |
と言われています。
①カナバニン
なた豆が草食動物に食べられないように自分の身を守るための植物毒として働きます。カナバニンは準必須アミノ酸であるアルギニンと構造が似ているので、なた豆を食べた動物の体内では、カナバニンとアルギニンと間違えてタンパク質に取り込んでしまい、適切に機能しない異常なタンパク質が作られてしまうのです。また、アルギニンは成長ホルモンを分泌させて筋肉を増やす作用があるので、カナバニンによってアルギニンが妨げられると筋肉量が低下してクレアチニンが下がるのかも知れません(単なる純炭社長の仮説です)。
②コンカナバリンA
コンカナバリンAは糖に結合するレクチンというたんぱく質の一種で、純炭社長は製薬会社の研究でよく使っていたそうです。「コンカナバリンAが腎臓を修復する」とのネット情報がありましたが、文献的にはコンカナバリンAによって腎硬化症や肝障害、急性膵炎が起きるとの報告もあり、更なる精査が必要です。新しい情報が見つかったら報告しますね。
③ウレアーゼ
ウレアーゼは尿素(血液検査で尿素窒素と表示されます)をアンモニアと二酸化炭素に分解する酵素です。こう書くと「尿素窒素を下げてくれる腎臓によい酵素?」と勘違いするかもしれませんが、それは間違いです。そもそも、人間は猛毒のアンモニアを無毒の尿素に変えて腎臓から排泄しているのですから、尿素を分解して猛毒のアンモニアを作るウレアーゼが腎臓に良い働きをするとは(現在の純炭社長の知識では)考えられません。
「ウレアーゼやカナバニンは熱に弱いのでお茶にすれば大丈夫」との情報もありましたが、それなら腎臓になぜ効くの???とも思ってしまい、今のところ、なた豆茶がなぜ「腎臓に良い飲み物」と言われているのか?はわかりません。
おわりに

「コーヒーはどうなの?」という質問も多いです。実はコーヒーには寿命を延ばす効果があり、身体に良い飲み物なのです(詳しくは関連記事をお読みください)。【関連記事】腎臓に良い食生活 コーヒー編
ただし、コーヒーの様なカフェインの入った飲み物やアルコールは利尿作用があるので、それらを楽しむ場合はプラスアルファの水分摂取を心がけてくださいね。
「味のない水を2リットルも飲むのが苦痛」という場合はきよら通信vol.36が参考になると思います。
【関連記事】きよら通信vol.36
仮に夏の検査でちょっと悪い結果が出たとしても、気温が下がる秋になったら元に戻ったという声も少なくありません。毎回の検査結果に一喜一憂せずに、水分をこまめにとって夏を楽しんでくださいね。
参考文献
1. Torres C et al.
Decreased kidney function of unknown cause in Nicaragua: a community-based survey.
Am J Kidney Dis 2010; 55: 485–496.
2. O’Donnell JK et al.
ニカラグア農村部における慢性腎臓病の有病率と危険因子
Prevalence of and risk factors for chronic kidney disease in rural Nicaragua.
Nephrol Dial Transplant 2011;26: 2798–2805.
3. Peraza S et al.
エルサルバドルの農業労働者の腎臓機能の低下
Decreased kidney function among agricultural workers in El Salvador.
Am J Kidney Dis 2012; 59: 531–540.
4. Chatterjee R
Occupational hazard.
Science 352: 24–27, 2016.
5. Roncal Jimenez et al.
Fructokinase activity mediates dehydration-induced renal injury.
Kidney Int. 2014 Aug;86(2):294-302.
6.Rehydration with soft drink-like beverages exacerbates dehydration and worsens dehydration-associated renal injury.
García-Arroyo et al.
Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2016 Jul 1;311(1):R57-65.
ちなみにラットの平均体温は37-38℃だそうで、36℃で1時間/日を4週間という条件は,我々が32,3℃で1日6時間を6日間ほど過ごすのを3.5年ほど経験するのと同じような感じでしょうか??(いくつかの値を参考にした推測です)となると近年の日本の気候と、この季節の温度,持続期間から考えて普通に生じうる環境ではないでしょうか?
【純炭粉末公式専門店】トップページはこちら
最近のコメント